これはテストです。
先日、元手塚プロ制作部チーフアシのB氏にお会いする機会があったので例の懸案事項をぶつけてみた。
なんと衝撃の証言が飛び出した!!!
以下B氏とのやりとり
---
B氏曰く「観てたね。」
わたし「工エエェェ(´д`)ェェエエ工工」
B氏「試写の帰りに日本アニメーション協会の片山雅博氏に偶然目撃されちゃったらしいのだ...」
わたし「ほほぅ!」
B氏「焦った先生は開口一番に『長いね!僕だったら半分でまとめられるね!!』と投げ捨てて、そそくさとその場を去っていったらしいよ」
B氏「先生らしいよな...(笑)」
わたし「うーむ...」
わたし「僕ら当時の現場スタッフの人間をはじめ、先生の専属運転手&マネージャーも知らない間に、先生はしっかりナウシカ観に行ってらっしゃったのかぁ...」
B氏「そーゆーの得意だもんね(笑)」
わたし「その後、先生は貝のようにナウシカに就いて語らなかったところをみると...」
B氏「うん、そういうことだ」
わたし「ムムム...」
---
そんな訳で先生はナウシカを観ていたという証言があっさり取れてしまったのだった...。。。
とゆー質問をずいぶん前に、編集家の竹熊健太郎さんに聞かれて、何でも公式発言を調べ回ったのだけど、どこの文献にも残ってないんだそーで事実関係を憶測ではなく事実としてちゃんと把握して置きたいとの事でした。
わし自身、実は在籍中先生に「あなた"風の谷のナウシカ"は観ましたか?どうでしたか??」と直に聞かれたことがあって(実際に観ていたかどうかは分からないが)相当感心があったご様子だったので「分からない。でもその場合、先生の気質として観てない訳はないんじゃないか??」とだけ竹熊氏には申し上げました(憶測なんで意味無し)。
個人的にわしも気にはなってた事なので「んじゃ、そのうち調べときまーす」とか云って、ついついご無沙汰しちゃってたんですが昨日丁度、先生の17回忌の偲ぶ会があったので1984年当時の最も側近だったマネージャーK氏と運転手S氏に伺ってみました。。
例の藤子F氏の全集が出た際に「しばらく僕をひとりにして置いてください」とマネージャーK氏につい漏らした、そのK氏、運転手S氏ともに「んー(観てたか観てないか)微妙だね」「その話題で話したことはない」との事。
このお二方が知らないと云うことは(先生が観てたかどうかは別にしても)本当に徹底して誰ともナウシカの話題を口にしなかったというのが事実の様です...。。。
どこの大手漫画家プロダクションもそうだと思うのですが、身内スタッフが師である先生にサインを求める事は大変失礼な行為でありますし禁じられているはずです。
手塚プロも例外ではなくご存命中、手塚先生からサインを頂くことは固く禁止されてました。
唯一サインをお願いできる機会があるのですが、それは退職(手塚プロでは約二年で"卒業"という名の独立を科せられます)する時だけ特別にサインをオネダリする事が出来るのです。
ところがですよ、僕が退職した1985年夏頃は社内が丁度バタバタしていた時期で、とても色紙をお願いできる様な雰囲気ではなかったんですね...。
とうとう色紙を頂けないまま、僕は寂しく卒業していったのでしたが
後に辞めた僕の同僚が運良く色紙を描いて貰っていてね、すごく羨ましかったなぁ...。
悔しいので、そいつから色紙を頼み込んでコピーさせてもらってね、僕も先生から色紙を頂いた気分をちょびっと味わったものでした(笑)。
さて今回はその恨め羨ましい色紙を公開しますので、みなさんも僕と同じように先生からサイン頂いた気分を味わってください。


漫画家の間で、しばしば話題に登る伝説のドキュメント番組。手塚先生に「右です。右」と怒られているのは若き日の僕です。 尊敬しているある方(※故坂口尚先生)とその話をしていて「あー怒られていた人いたね?。 彼はショックのあまり田舎に帰ったかもしれないね・・」と言われた。 「それ、俺ッスよ。俺」と僕は答えた(笑)。
- ---
- では、みなさんそれぞれに、手塚プロ体験で得たものとか、手塚先生に対して、でもけっこうです。最後に一言づつ。
- 吉住
- 僕にとっては素晴らしい学校だったですね。マンガの道に入った大きなキッカケでもあるんだけど、あんな大天才の仕事ぶりを見る事は、おそらくもう二度と出来ない体験だったと思いますし・・・先生の存在自体に教えられたことは数しれずありました。仕事としての実感はあまりなかったけど、先生にはとても感謝しています。
- 堀田
- とにかく、手塚先生は本当にムダのない人っていう気がしますね。自分の頭の中に、それだけ・・・例えばアニメでも、時代を先取ろうというものが一杯つまってて、家族を顧みないっていうところもあるけど、地のままで行ってしまった人なんですよね。それで、先生の力を認めざるを得ない、まわりの人それがいて成り立つ天才・・・そういう人を見られたことを喜んでます。
- 高見
- 私はもう、アシスタントとしては無能の極致でした。だから、先生のマンガに貢献できた、みたいなことがないんですけど、今描いてる自分のマンガの基礎っていうか、そういうのはもう、全て手塚プロで学んだっていう感じですね、マンガらしきものは、小学校中学校から描いてきたんですけど、やっぱり私のマンガの始まりって言ったら、手塚プロに入ってからだなって思います。今、なんとか食べていけるのは、手塚プロのおかげだし、手塚先生の原稿を手にできた・・・あの主線をね、この目で見られたっていうのはすごい収穫だったと思いますね。
- ---
- うまい人の生原稿を見るっていうのが一番勉強になるらしいですね。
- 堀田
- 絵がさ、浮き出て見えるんだよね。
- 石坂
- すごくかわいいの。ピノコやユニコが。本当に上手い。
- 高見
- 生きてるっていうか。
- 堀田
- あれは未だ描けないもんね。
- 石坂
- 私は一年半ぐらいいたんですけど、私のできた仕事といえば、ベタぬりとホワイトと(笑)色原稿の下塗りぐらいで、失敗ばっかりやってたんですよ。で、今、人に(手伝いを)頼むようになってね、もっとしっかりやっておけばよかったとはつくづく(笑)思います。でも、私はね、特に先生が亡くなられちゃってからはね、本当に、先生の近くにいられてよかったなと思って。しみじみ想うと、どう考えても天才だったと思うんですよ。天才って、そう何人も会ったりできないと思うのね。まず、同じ時代に生きられて、こう直接な影響を受けたってだけでも私は、ものすごい幸運だったなぁと思いますね。目のあたりに出来たというだけで奇跡に近い光栄なことだったなって。それが、一番大きく思ったことですね。次に思ったことは、自分のマンガがまだ未熟で恥ずかしくて、先生に堂々と見てもらうことができないままだったのが残念だということ。いつかはいい作品を描いて先生のとこに行って、胸をはって「このマンガ見て下さい」って言おうと思ってたのに、それができなかったからね。すごく寂しいし、すごくくやしい。 それから、もうひとつ。他でも何回か言ったんですけど、先生に「安らかに眠って下さい」って言葉がよく送られますけど。でも、私は絶対、先生は安らかに休んでいられない心境だと思うの。あのバイタリティとエネルギーの生命体は、そんなに納得してお休みになれないと思うんだよね。まだ、貧欲にマンガを描こうとしてるはずなんです。・・・だから、私たちが「残念だね」って言ってる以上に、本人がどれだけくやしかったろうと思うとね、もう本当に、先生が今、地たんだふんでくやしがってるような姿が目に浮かんで、もう一度悲しくなってしまうんです。
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- 手塚先生のライバル意識みたいなことについては、どうです?例えば『風の谷のナウシカ』を観なかったという話もありますけど。
- 高見
- 宮崎駿さんには、かなりライバル意識が・・・・あったという話を聞いたことがあります。
- 石坂
- 宮崎さんに関しては、直接は聞いてませんけど、あとからいろいろ、みんなに確認したんですね。結局、直接『ナウシカ』を観たなり、批評なりしないかわりに、暗にね「今のアニメ界はもう、人にはまかせられない」みたいなことを言ってるんですね。
- ---
- 自分で、やりたくてしょうがなかったんじゃないですか?
- 石坂
- うん、それもね。
- 吉住
- 本当は、認めてましたよね。
- 石坂
- すごくくやしかったみたい。先生は、くやしがって批判しちゃうタイプだと思う。
- 堀田
- あれはやっぱ、天才の癖なんじゃないかな。
- 高見
- 他のマンガ家のことをね、ずいぶん気にされてたみたい。
- 石坂
- ムキ出しなんですね、ライバル意識が。それで一回、びっくりしたのがね、何人かの若手マンガ家が、先生主催のチャリティ会に呼ばれて来ていて、つまり先生が接待してる形でのパーティだったんだけど、大友克洋さんが出て来たばっかで注目されてた時だったのね。そこで、先生が大友さんにね「ボクあなたの絵、見ました」って言ったの。「マンガをね、虫メガネで見たけど、それでもデッサンが狂ってませんね。スゴイですね!」って言って、「でもボクね、あの絵、描けるんですよ」って言うわけね(笑)、大友さんの目の前でね。それで、うわァーなんて思ってたんだけど、「ボクはね描こうと思えば誰の絵でも描けるんですよ。描けないのはね・・・・」で、二人名前言って、一人は諸星大二郎って言ったんですけど。・・・そういう話はね、半分は本当だと思うのね。描こうと思ったら描いちゃいそうな感じあるし。ただ、よく大友さんの前で、ねェ(笑)。私は大友さんの絵、スゲエなァって思ってましたからね、わあ、言うもんだなーって思っちゃって。
- 吉住
- 中央公論のね、藤子不二雄さんの全集が出た時は、落ちこんでました。
- 石坂
- 本当に?
- 吉住
- 「しばらくボクを一人にしといて下さい」って(笑)。
- 石坂
- へえー。
- ---
- ライバルとしては、一番初期に福井英一が登場しますけど、福井さんは、手塚先生とは全く違ったスポーツ物を描いていたわけですけど、その後も手塚先生はほとんどスポーツ物は描いてませんよね。
- 堀田
- 弱点かも知れないね、それが。
- 石坂
- 昔ね、『あしたのジョー』だか『巨人の星』だかを持ってきて、アシスタントの前にバンッて置いて「みんな、これがどうして面白いのか、教えてくれ」って言ったらしいよ。
- ---
- 白土三平じゃなくて?
- 石坂
- スポーツ物の方です。・・・ただ、スポーツはね、もっと素朴に、先生は運動がそんなに好きではなかったからなんではないかという・・・・。西武ライオンズの、あのマーク。あれはちょうど私たちがいる頃に描いたんだけどね、レオちゃん、あれが・・・。 堀田
- バットの持ち方でしょ(笑)。
- 石坂
- そう、投げる手とバットの持ち方が左右全部逆に描いちゃったんですよ(笑)。逆版で使ったはずですよ。
- 堀田
- あまりスポーツのことわかってないんだよね(笑)。
- ---
- マンガ家にとっての弱点、というと、編集者というような場合もありますが(笑)。
- 石坂
- 白井さん(ビッグコミックスピリッツ編集長)に聞いた話なんだけど、昔ね、白井さんが先生の自宅に原稿取りに行ったんだって。自宅なら絶対いるからって。で、車つけるとわかっちゃうから、車はだいぶ手前で停めてね。歩いて近づいたらしいんだけど、それでも2階の灯りがフッと消えたらしいのね(笑)。で、絶対いるの。わかってるから、奥さんに「どうもすみません、ちょっと行きますから」って言って、足音をたてないで階段を上がって、2階のドアの前に行ったら、それよりももっと音をたてないで、ドアの下からツーッと原稿が出て来たって(一同爆笑)。
- 堀田
- わざわざ灯りを消すとこがすごいね。
- ---
- 藤子Aさんの『まんが道』でも、灯りを消すシーンが何回か出て来ますよね。
- 堀田
- 今の先生の家に原稿取りに行くことが僕も何回かあったんですね。タクシーで行ってたんですけど、灯りがついてね、「あ、まだ先生起きてるな」と思ってさ、タクシー停めると、パッと電気が消えちゃうの。庭から上がるにも電気が消されてて、まっ暗だからさ。で、何でオレ編集でもないのに消しちゃうんだろうなってブツブツ言いながら行くわけ。で、呼び鈴をピンポンってやるでしょ。そうすると、先生のお父さんが出てくるのね、ステテコか何かはいて。で「手塚プロのアシスタントですけど」って言うと「あーご苦労さん」なんて言われて、そこへドタドタドタって3階から先生が降りてきてね、ステテコ一丁で出てるお父さんを見てさ、すごい恥ずかしがるんですよ。「やめて下さい!こんなかっこで」なんて言って横に倒すんだよ(笑)。でさ、パッと渡してパッと帰すの。でね、電気消すのって、あれ、わざとやってるとしか思えないでしょう。車がパッと着いて、その音だけで消してるから。
- ---
- 条件反射とか。車イコール編集者。
- 石坂
- そうかも知れないね。必要以上にさ、邪魔される気がするんだと思う。気分的に。
- 堀田
- でも、庭の電気まで消しちゃうんだもんなァ。3階にメインスイッチがあるんじゃないですかね。で、誰か来たら、全部消しちゃう。
- ---
- 不自然だとは思ってなかったんですか先生としては。
- 堀田
- 先生は、けっこう不自然なことを平気でやっちゃうんだよね。
- 吉住
- 机の下に隠れたってバレますよね(笑)。
- 堀田
- バレるよね(笑)。窓から抜け出したって見えるしね(笑)。
- 石坂
- カンヅメしてるところからいなくなって、編集者が探し回ってて、とんかつ屋の店内をパッと見たら先生がいてさ、「先生!」って声をかけようとしたら、先生がね、テーブルの下に隠れちゃったっていうのがね、本当にあって(笑)。
- 堀田
- でも、映画はずっと観てたらしいですね。いつ抜け出るか、わかった?
- 石坂
- わかんなかった。でも、パール座なんか、よく行ってたらしいですね。
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- 仕事の方の印象的なエピソードは、まだまだありそうですけど。
- 石坂
- さっき少し出たけど、先生が4階にいると思いこんでいて、2階で話してるとうっかり聞かれたっていうこともいっぱいあったんですよね。本当に悪口言ってたりして。編集の人(笑)。
- 堀田
- あの『ブラックジャック』か何かでね、暴走族のシーンがあったんですよ。で、そこに描かれてるヘルメットがね、昔風のやつでね。もうその頃はフルフェイスが主流になる頃だと思うんだけど、そうじゃないやつでね。で、僕とわたべくんが「こういうのって古いんじゃない?」「そうかもしれない」って言ってたらね、隣で先生が聞いてたらしくてね。それで4階から電話がかかって来てね、原稿全部引き上げて「このヘルメット、今風にしてください」って。
- 石坂
- ああ、あったあった。
- 堀田
- 全部描き直した。切り貼りしてね。
- 石坂
- ね、まずアタリだけあったんで「ウヒャー、これは時間かかるな」って思って、「でもまァこの絵を先生が描くわけないよ」ってアシスタントが言ってたんです。これはもう誰かに描かせるだろうし、そんなに先生の時間をとるわけじゃないから大丈夫でしょう、とか何とか言ってたらね、先生が、みーんな描いちゃったんですねェ!それを。見開きの、ものすごい綿密な人間を。本当に感激した。
- 堀田
- あれは、そうとう時間が危なかったんだよね。
- 吉住
- でも、そんなことがいっぱいあったね・・。僕たちがあわててね、一所懸命背景描くでしょ。でね、また時どき「先生は背景描かないんだもんな、楽だよ」とか誰か言ってると、そのあと必ず「この背景誰が描いたんだ?」「オレ描いてませんよ」「あれっ、先生描いたんだよっ!」って(笑)。
- 石坂
- 描いちゃうんですよ、本当に。要するに先生ってね、背景でも何でも、時間があれだからアシスタントに描かせてるんだけど、家を描くんでも、車でも、描こうと思ったらやっぱり先生の方が、本当に早くて上手いんですよね。すごい自負があるのよね。
- 堀田
- でも、そうでもないんだよ。ボロボロの線の時があったよ。「誰が描いた」って言って、みんな「やりません」。で、先生だった。
- 石坂
- 背景で?
- 堀田
- 背景で。・・・いや、先生も疲れきってたんでしょうね。ふるえちゃって。"SFの円"ですからね。キレイな線じゃないといけないんですけど、あんまり思い切りなんで(笑)。人の原稿だったら誰も描けないような(笑)。
- 石坂
- そうかァ。私が憶えているのは、キャラクターがムチャクチャに入れ替わってたとか、そういうのがあったな。私たちが入った年の夏からアニメの『バンダーブック』始めちゃったりしたから、マンガとアニメの締め切りで先生を取り合ってたような感じだったから、もうムチャクチャでね。
- ---
- 忙しさも含めて、手塚先生の仕事ぶりは、やっぱり人間業じゃなかった・・・・。
- 吉住
- 先生の生涯の中で平均で割り出すと、一週間に80枚描いて、つまり四本の週刊連載を40年間続けたことになるそうですね。作品にかける情熱も質も量も含めて人間業じゃないですよ。
- 堀田
- ああ、今スッと思い出したんだけど、昔、Sさんっていう背景が非常に上手い人がいてね、それで、ある時、その背景の中に直角だか平行だかが入っていて、どっちか忘れたんで平行だったことにするけど、先生がね、Sさんが描いたのを見て、「これは平行じゃない」って言ったの。そしたら、Sさん・・・あの人はちょっと感覚が僕たちと違うんで、先生にもものを言えちゃうんだけど・・・「絶対に平行だ」って言い張ってね。分度器で計ったの(笑)。そしたら、1度だけ違ってた。
- ---
- 1度!!(笑)すごいですね。
- 吉住
- 僕なんかだと、一番大変だったのは、全集版の『新宝島』の話になりますけど。
- ---
- 描き直し、ですか。
- 吉住
- ええ。当初はね、古い赤本時代のもので原画がすでにないものでしたから、赤本版のコピーをそのまま使おうという方向だったんですけどね、先生たっての希望で、まずアシスタントが赤本のコピーを全部鉛筆トレースして・・・背景から何から何までね。その時は一ヶ月くらいずっとトレスに明け暮れてましたが・・・。で、それを先生が更に全部主線をペンで入れ直したんです。本当にね、200ページ近くも・・・・。
- 堀田
- ほう、全部先生が。
- 吉住
- 全部。だから、あれはまったく別のものになりますけどね。
- 堀田
- とりあえず昔の絵に似させようとする努力はしたんでしょ?
- 吉住
- すごく似せてましたね。
- ---
- 当時の赤本自体、書き版という、職人がトレースして版を作るシステムだったんで、先生のタッチとはずいぶん違ってたはずなんですけどね。
- 堀田
- その頃って、江戸時代とあまり変わってないんだなあ。
- 吉住
- その意味じゃ、先生初の長編作『新宝島』は、これだけの年月を経て、ようやく先生のオリジナルになったってことですよね。
- ---
- あと、締め切りギリギリで、折りの関係で最終ページから描き始めて、ページ順の逆に入稿したことがあるらしいですけど。
- 石坂
- へえ。でも、もっとたまげるようなこともあるもんね、やっぱり。
- 吉住
- それだと、締め切り6時間の話が。
- 石坂
- そうだね。『少年マガジン』の編集の人の話なんだけど、『少年マガジン』の20ページの原稿があって、もうその日の午後3時に印刷を引き上げちゃうから、それがリミットだったんだけど、その朝9時に主線が一枚しか出てなかったし、絶対にムリだと判断したんだって。もう代用原稿の印刷も済んでいて。朝の一枚も表紙だけだし、3時までに20ページアップはムリだっていうんで、編集も引き上げてたんだって。で、その編集者も寝てないもんだから、家に帰って風呂に入って布団しいてたらしいんだけど、そこへ編集長から電話が入って「手塚さんから今、電話があって、6時間あればマンガ描くって言ってるから、すぐ行け」ってことになったの(笑)。
- 堀田
- 6時間で20ページ!?
- 石坂
- 間に合うわけない、とは思ったんだけど、やるだけのことやっていたって言わないとまずいからね、あわてて行ったんだって。そしたらね、2時45分ぐらいまでに16、7枚できて来たんだって、主線が。これは考えられないよ、すごいよ(笑)。で、あと2枚か3枚残ったっていうところまで、主線がおりたんだって。でもさ、それはこれからアシスタントが全部仕上げてね、しかも印刷所に行ったら、こりゃもう3時までっていうのはムリなんだし、・・・ただ先生にしてみれば、「いや、もう僕はやるだけやりましたから」って言い出しかねないし、人質とられちゃってるようなもんだから、どう言えば先生があきらめてくれるかって考えて、頭かかえちゃったんですって。かえって困っちゃったなァと思って。そしたらね、3時5分前に、先生が上からタッタッタッて降りてきて、「やっぱりできませんでした、すみません」て言って頭下げたんだって。その時はさすがに感動したって、その編集の人は言ってたのね。だから、最後の集中力っていうかさ、最後まで捨てないでくらいつくように描く感じが、ね。
- 吉住
- 主線だけじゃなくて、ネーム入れての16、7ページですからね。
- 石坂
- まっ白からだからね。
- 堀田
- ネームができてれば、もう早いですよ。
- 石坂
- で、今のは追悼会の時に聞いたんだけど、もうひとつ、三浦みつるさんに聞いた話っていうのもあってね。・・・先生のやり方っていうのは、主線描いて、背景を指定して、何度もそれを見せて、仕上げの指定を受けて、最後に先生が○(マル)をつけた段階で、ようやくあがりなんです。それで、すごい完璧主義だから、途中で「まァこれでいいです」っていうことは絶対ないわけ。ところが、一回だけ先生が○をつける前にね、編集者がかっさらうようにして印刷に入れちゃったことがあるの。私もね、当時田舎にいた高校生だったけど、その雑誌見た覚えあるのね。・・・飛行機だけが描いてあって、キーンって音が書いてあるだけで、滑走路も建物も何もなかったのが何ページかあったんです。どう見てもおかしいなって感じなんだけどね・・・・。で、三浦さんはその時のアシスタントやってらして、その事件のとき、やっぱりアシスタントとしてビビってたらしくて、それが載った雑誌が出た時、会社でみんなで見ててね、「ゲー、やっぱりまっ白だ」とか言ってたんだって。そこへ先生が来ちゃって、みんなはもう冷や汗だよね、先生はどんなに怒ってるか、なんて思ってるから。そしたら、一緒にのぞきこんでた先生がね「本当にまっ白ですね、ハハハハー」って笑ったんだって。三浦さんは、ああ先生も笑っちゃってる、と思って恐る恐る顔を見たらね、先生、涙、浮かべてたんだって・・・・。
- ---
- もう、ショックを通り越して・・・・怒りを通り越して。
- 石坂
- ものすごく、くやしかったんだと思うんだよね。でも、アシスタントの手前、弱音を吐かないというさ。それを聞いて、もう感動しちゃった。先生らしいのね。
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- 堀田
- アメリカで思い出した。まだFAXがなかった頃、先生アメリカから電話で背景を指定したことがあったよね。碁盤の目を引いといて、っていう。
- 石坂
- アメリカだったの、あれ!
- 堀田
- アメリカなんだよ。ニューヨークかどっか。でさ、通話してる時間を考えたらさ、もう描かない方が安上がりなんだよ(笑)。
- 石坂
- 原稿料ぶっとび。・・・その、碁盤の目っていうのはね、背景の指定を電話でする時、タテヨコのマス目をとってくれって言うわけ。ファックスがない時代だから絵を、どの位置でどういう絵でって言うのって難しいじゃない。
- 堀田
- それで「Fの6」とか言いながら指定するんですよ。それで、あとからその点をつなげると絵の指定になるわけ。
- 石坂
- 本当にねェ、一時間以上かけて。
- 堀田
- あれはすごかったね。
- 吉住
- そういう金銭感覚って、ないでしょう。電話でそういうことって、他にもあるしね。
- ---
- いくらかかる、とかそういうことはあんまり気にしない・・・・。
- 石坂
- でも、ヘンなことを気にするとこもあって・・・あきおくん、あの、お乳かくしてた話、やって。
- 堀田
- 夏にね、4階に呼ばれて、指定を全部持って上に行ったんですよ。で、先生が、一応指定するんで、バッと来るんですよ。でね、すごく暑かったんで、上半身裸だったんですけどね、先生は、こう、おっぱいを手で隠しながら(笑)こうやって出てきて、「すいません、こんな姿で失礼します」って。
- 石坂
- 先生かわいー(笑)。
- ---
- 銭湯とか、行ったことないんですかね?
- 堀田
- ほとんどないんじゃないですか。トキワ荘の頃は行ったかも知れないけど。大阪の頃とか・・・・。
- ---
- いや、大阪では、もう家が金持ちだったから、銭湯はないでしょう。
- 石坂
- そうなんですか。いや、そうだな、戦前に8ミリを持ってたり、マンガを持ってたり・・・お父さんが買ってくれた、なんて言ってね。
- 石坂
- 先生のお父さんは、何をやってたんですか?
- ---
- 銀行員とか、そういう。
- 堀田
- 意外と普通のお父さんだったかも。
- ---
- でも、趣味人ですよ。映画を子供にバンバン見せたり、マンガの本が三百冊か四百冊あったらしいし。
- 堀田
- そうとういい環境にいたんですね。
- 石坂
- 不思議だったんだけど、それで性格が片寄っていたりとか、とんでもない偉そうなことを言ってるんだったら納得がいくんだけど、あれだけ生活感のない人なのに、ちゃんとね、何か、生活のヒダというか、弱い方の人の気持ちを描いてたりとか、機微があるでしょう。
- 堀田
- でも、あれはもともと持ってるんだろうね。
- 吉住
- 資質だよね。
- 高見
- 仕事の話じゃないけど、先生が珍しく制作室・・・アシスタントの部屋で仕事してた時に、家から電話があって、たぶん奥さんと話してたんだろうと思うんですけど、どうやら息子さんがギターをほしがってるらしいんです。で、先生は「サイフ全部渡すと、一番高いのを買っちゃうから、必要な額を聞いて、必要なだけ持たせなさい」とかって、そういう話をしてるのを見てね、何か意外だった。何か、お父さんなんだなって。
- 石坂
- へえー(笑)。
- ---
- 大体、結婚生活30年で、奥さんと一緒にいた時間をトータルしても、たぶん一年半ぐらいしかなかった、なんて言われてて・・・・。
- 石坂
- 奥さん、たいへんだったでしょうね。
- 堀田
- 僕たちの頃で、週に一回帰ってるか帰ってないかだもんね。
- ---
- 先生とは別の意味で、同じくらい大した人ですね。
- 高見
- 私もそう思います。
- ---
- まだ、新婚の頃には、トイレの窓から侵入する編集者がいたり、アシスタントが家にいたりで、ずいぶん大変な思いをしたっていう話ですから。
- 堀田
- 普通の人だからね、奥さんは。
- 石坂
- 大変な人と結婚しちゃったからね。
- 堀田
- でも、奥さんキレイだもんね。
- 高見
- うん。ねェ。
- 堀田
- 先生が描く女の人によく似てるじゃない、ね。
- 吉住
- でも、奥さんとして作中に出てくる時は、あんまりいい顔で出てない(笑)。『バンパイヤ』とか。
- 石坂
- そうそう。
- 堀田
- 昔ね、先生と奥さんの新婚旅行か何かの8ミリフィルムが出て来たんだよね。それでね、制作室で映したんだよ、知らないかな。で、先生がね「これは一体なんですか?」っていうから「先生の新婚の時のじゃないですか?」って言って映したのね。そしたら先生・・・照れてた(笑)。
- 石坂
- えー、本当に(笑)。
- 堀田
- ゲラゲラ笑いながら。ボートに乗ってるやつとかさ。ずいぶん古いんだけど、ちゃんと8ミリ持ってたんだなァって、こっちもね。
- ---
- 禁断の部屋というのは、いつからそうなったんですか?
- 高見
- 私たちが入った時には、もう既に、ね。
- 石坂
- 手塚プロが高田馬場に移ってからああなったと思う。その前の富士見台とかの時は・・・先生だけの仮眠室とかはあったらしいんですけど、普段はアシスタントと同じ部屋で一緒にやってたらしいんです。で、馬場に行ってから、もう編集者とかに関わる作業は、そこを全部マネージャーがシャットアウトする形で、先生にとってはすごくやりやすい状態だと・・・・。だから、私たちが入る三、四年前・・'74か'75年からじゃないかな。で、後にも先にも一回だけなんだよね、あそこに入ったのは。
- ---
- あ、みんなで入ったんですか。
- 石坂
- 先生に呼ばれてね、「本箱の整理をしたいから、アシスタントみんな上げて下さい」って言ってね。私たちもすごく興奮して「あァー初めては入れる」なんて言ったんですね。普通のマンションの2Lか3Lぐらいの形なんだけど、もう、すごいの。引っ越して来た時にね、そのままバサバサッと資料用の本を投げこんだままの形で、三、四年もそのまんまだった感じなの。それを新しく買った本箱に入れる作業だったんだけど、本当にね、本を放り込んだだけっていう角度で。
- 堀田
- レコードもあれだよね、ジャケット入らないで・・・。
- 石坂
- もう、丸い盤がむき出しのままでみんな重なってて。もう、全然気にしてないの。それを全部ほどいていくと、虫とかがいっぱい巣食っちゃったりしてるの。くもの巣とか、もうすごいんだけど、そのむっちゃくちゃの中にね、ディズニーの原画とかがあったりするんですよ(笑)。
- 吉住
- メビウス(フランスのマンガ家)の色紙みたいなものとか。
- 堀田
- あとセル画とかね。
- 石坂
- もう昔のやつとかね。先生がよく『手塚治虫のすべて』に出してるような、鉛筆画で描いた・・・小学生の頃描いたヒゲおやじのマンガとかね。
- ---
- そういうものがある。
- 石坂
- あるの。もう、マニアが見たらもう・・・・。
- 堀田
- 楳図かずおが中学生ぐらいの時に持ちこんだ絵とかね。
- 石坂
- そう。「これ、誰の絵かわかりますか」って。
- 吉住
- 僕らの時にあったのは、大掃除か何かしてね、下(2階)にダンボール箱をボンッとか持って来て「これもういらないですから、処分して下さい」って言うんです。で、あけてみると、何だか宝の山なんだ、これが(笑)。
- 堀田
- それはきっと、先生としては「もしほしいならあげるよ」みたいな・・・。
- 吉住
- ああ、そういう感じでしょうね。
- 石坂
- 捨てる前にね。先生にとっては不要でも、もうとんでもないものがいっぱいあってね。
- 堀田
- 先生はわかってんだよね。4階の片づけでも、アシスタントに手伝わすと喜ぶ、とかね。
- 石坂
- で、あの時さ、先生んちの冷蔵庫に"ゴキブリホイホイ"が入ってたの憶えてる
- 高見
- ええ?それは知らない。
- 石坂
- 入ってたんだよ。組み立ててあって。私、ビックリしちゃってさ(笑)。
- ---
- その禁断の部屋の冷蔵庫に、ですか?
- 石坂
- そう。で、他には何も入ってなくて、それが不思議でね。ただ、ゴキブリホイホイが一個、入ってる(笑)。私だけしか見てないのか。じゃ、こっそり見たのかなァ・・・・。
- ---
- 先生の食事の手配とかはどうしてたんですか、普段は。
- 堀田
- マネージャーが、一応。
- 石坂
- あの先生の部屋はね、基本的にこちらからは連絡できないんですね。マネージャーだけ、よっぽどの時に様子を聞くだけでね。編集者なんか、一言も電話なんか入れられないんですよね。で、先生の方から「食事をくれよー」とかっていう。
- 吉住
- でも、あまり原稿が出来てない時はね、先生が食べちゃうと、三時間ぐらい原稿が出なくなっちゃうの。
- 石坂
- そうね(笑)。
- 吉住
- マネージャーとかが「今、食事出すのはまずい。もうちょっと原稿が出てからにしよう」とか言って(笑)。
- 高見
- 「今食わすと寝ちゃうから」って(笑)。切実なものがありますね。
- 吉住
- ありゃ、かわいそうだね。
- 吉住
- チョコレートの話は有名ですけどね。
- 高見
- あ、チョコレート好きだったんだよね。
- 吉住
- ある時、チョコレートをみんなにたくさん買ってきて、「みんなで食べて下さい」って言ってから、先生は上に行ってちょっと仕事して、また下に来たんですよ。そしたら「あ!ボクの分がないじゃないですか!」(一同爆笑)「ボクの分もみんな食べちゃったんですか」って。
- 石坂
- それ、有名。アハハハ。
- 堀田
- あと、先生がアメリカに行く時ね、スーツケースが僕の仕事してるところのすぐうしろに置いてあったんですよ。でね、何かでフタがあいちゃって、中身がバラけちゃったんで見たら、チョコレートがいっぱい入ってた(笑)。
- 高見
- アメリカにもチョコレートを持っていく(笑)。
- 堀田
- そうなんだよ。アメリカで買えばいいのにさ。
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待ちに待った手塚ディスニーの復刻だ。






大変素晴らしい復刻版でした

